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「視覚障害リハビリテーション」ってなに?

 現在、私は日本ライトハウスで「視覚障害者生活訓練等指導員」の養成課程を受講しています。 ややこしい名称ですが、簡単に言えば、視覚に障害をもった人達がより良い生活をするための方法を紹介したり、指導したり、社会に働きかける専門家の養成課程です。
自分自身、この仕事に就くまでは、「視覚障害」について考える機会は全くありませんでした。 ただ、思い返してみると、一度だけ自分の視覚に異常を感じたことがありました。

 今から10年くらい前の事です。
高校卒業後、美術の大学に進学するために美術の予備校に入って、毎日朝から晩まで 絵を書いていた時期がありました。 絵を描くのが好きなので、一日中絵を描けるのが楽しくて、目の疲れも気にせずにひたすら描いていました。
ある時、いつも通り絵を描き終えて片づけをしていたら、視野の真ん中が見えないことに気付きました。 しばらくは見えていないことにも気付かず、メガネレンズの汚れか、飛蚊症(視野の 中に透明な糸くずのようなものや、ミミズのようなものが見えること。当時は飛蚊症 の名前も知りませんでした)かと思っていましたが、何だか変だと思いはじめたら、 本当に視野のど真ん中が見えなくなっていました。
突然不安になり始め、翌日眼科に行って診断を受けたところ、見えなくなった原因は 目の使いすぎによるものでした。
結局しばらく休むことで、翌日になると見えなくなった部分は見えるようになりました。 その時はそれだけで終わったのですが、見えにくくなることを想像したときの不安感 というのは今も印象に残っています。
その当時は視覚障害について何の知識もなく、「視覚障害者」と聞くと、まったく見 えない人のことだと思っていました。
それから偶然の流れで、今は視覚に障害のある方に関わる仕事をするようになりました。
今でもときどき自分の目が見えなくなった時のことをボンヤリと思い出します。
あの時視野の中心が見えなくなった感覚が、視覚に障害をもった人の感覚と同じだっ たかどうかは分かりません。 でも、自分も経験したことで、誰にでもそういう事はあり得るのだと思うようになりました。
たぶん、そのころはこのKVSも生まれていなかったし、眼科医療のレベルも今ほど 進んでいなかったし、見えにくい人のための補助具も少なかったと思います。 以前に自分が働いていた盲導犬の世界も、今よりもっと狭いものだったと思います。
視覚障害リハビリテーションの関係者は、よく「この視覚障害リハビリテーションの 世界は狭い」と話されます。
10年たった今でも、それだけ当事者の方々に対して関わっているスタッフも少なく、 施設やサービスも少ないのが現実だと思います。
現在はその狭い世界の中で、右も左も分からずにもがいている毎日です。 この仕事をする人間にとって、技術や経験を身につけていく事と同時に、見えにくい人達が楽しく暮らしていけるような働きかけを広めていくことも重要な役割だと思います。 社会や関係施設・スタッフが協力して、視覚に障害をもった方が、自分の可能性を知って元気になっていくためのサポート(アシスト)ができるような仕事をしていき たいと思っています。
それが、今の自分が考える「視覚障害リハビリテーション」です。
by 寺田 真也(06年7月9日)

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